起業のアイデアがひらめく瞬間は誰にでもあるもの。「これ、いいビジネスになるんじゃないの?」そんな思いがよぎる、あの瞬間です。そこから発展することはめったにないでしょう。でも、もしそこから一歩踏み出すとすれば、次のステップは?
50ページもの事業計画書に取り掛かる前に、まずそのビジネスモデルが実現可能かどうかを確かめるべきでしょう。そこで役立つのが、ビジネスモデルキャンバスです。これは、事業計画の枝葉を切り落として簡素化し、ビジネスモデルの重要な要素のみを含む1ページのテンプレートにまとめるためのフレームワークです。視覚的で修正しやすいため、「走り書きレベルのアイデア」の段階を過ぎた後でも役立ちます。チームは、この1ページの概要を、自社のビジネスがどのように機能するのかを示す「生きたスナップショット」として頻繁に参照します。
読み続けて、ビジネスモデルキャンバスの要素とその作成方法についてさらに学びましょう。
ビジネスモデルキャンバスとは?
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスを立ち上げ、維持し、市場に展開するために必要なハイレベルな戦略的詳細を1ページで視覚的にまとめたものです。理論や仮説を検証しながら、簡単に更新できる「生きたドキュメント」として活用することを目的としています。コンサルティング会社 Strategyzer の Alexander Osterwalder 氏は、企業がビジネスモデルをすばやく視覚化し、マップ化するための方法として、このフレームワークを考案しました。
ビジネスモデルキャンバスの中心となるのが、価値提案です。「製品からお客様は何を得られるのか」という問いが出発点となります。ここから、自社やお客様に関する情報をキャンバスに追加していきます。この情報は、仮説として捉えていきます。ある条件下においてビジネスが生き残れるかどうかを考えることで、ビジネスモデルの実現可能性を手軽に判断することができます。
チームがこのフレームワークを使用するもう1つの方法は、競合他社のビジネスをマッピングし、その後、強み、弱み、ギャップを比較することです。これにより、競合他社が十分に対応できていない領域に対処するモデルを構築することができます。
ビジネスモデルキャンバスの要素
前述のとおり、ビジネスモデルキャンバスはテンプレートであり、どのキャンバスにも同じ9つの要素が含まれています。
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価値提案
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主要なパートナー
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主要な活動
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主要なリソース
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顧客セグメント
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顧客との関係
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チャンネル
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コスト構造
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収益ストリーム
これらの要素をそれぞれボックスの中に入れます。ボックスはすべて同じように整理します。ビジネスインフラ (パートナー、活動、リソース) に関連するものはすべてページ左側に、顧客関連の要素 (セグメント、関係、チャネル) は右側に、財務関連の要素が下部に表示されます。ページ中央の価値提案がすべての要素をつなげます。
レイアウト自体はほぼできあがっているので、簡単です。では実際に、ビジネスモデルキャンバスに含めたい内容を具体的に考えていきましょう。
価値提案
お客様に何を提供するのか、解決したい課題や問題点は何か、どう解決するのかなど。こうした質問にできる限り簡潔に (一文がベストです!) 答えることで価値提案の内容が浮き彫りになります。価値提案は、事業計画のあらゆる側面に影響する道標となる要素です。
主要なパートナー
製品やサービスを完全に一人で提供できることはまれで、サプライヤー、販売業者、親会社などのパートナーが何かしら関与することが多いでしょう。
例えば、近所のジューススタンドの場合には、スタンドを運営しているオーナーが自社農場で果物を育てているわけではなく、食料品店から調達しているはずです。また、什器を親戚から借りているかもしれません。この場合、どちらも主要なパートナーとなります。あるパートナーが主要なパートナーに該当するかどうかを判断するには、そのビジネスモデルがそのパートナーなしで機能するかどうかを自問してみましょう。もし答えが「機能しない」なら、その相手は重要なパートナーです。
主要な活動
ここでの活動とは、価値提案を実現するために必要なアクションを指します。ジューススタンドの例に戻ると、誰かがジュースを絞って、注ぎ、お客様から代金を受け取る必要があります。これらすべてが主要な活動となります。ある活動が主要な活動に当たるかどうかを判断するには、同様に、そのビジネスモデルがその活動を行わずとも機能するかどうかを自問してみましょう。
主要なリソース
リソースを列挙する際には、物理的なリソース以外にも目を向けます。人材 (従業員)、知的リソース (ノウハウ) や財務リソースも必要になるでしょう。
顧客セグメント
誰に向けて商品やサービスを提供するかを考えてみましょう。ジューススタンドの従業員にはソフトウェアエンジニア向けの製品は必要ないはずです (通常であれば)。
顧客セグメントとは、製品から価値を得る個人や企業のことを指します。こうしたセグメントを考えることで、購入者像からビジネスを検討することができます。
顧客との関係
顧客像ができあがったところで、その顧客とのコミュニケーションややり取りの方法について考えてみましょう。販売後のサポートは必要でしょうか?購入者の体験をカスタマージャーニーマップで図式化すれば、接点を特定し、関係の発展を追跡する上で役立ちます。
チャンネル
購入の可能性のある消費者にどうリーチするかを考えてみましょう。ソーシャルメディア、SEO やカンファレンス経由など、こうした接触手段をチャネルと呼びます。顧客との関係構築と維持は営業チームが、チャネル構築と維持はマーケティングチームがそれぞれ担当するのが一般的です。
コスト構造
ビジネスの運営には、出費が伴います。主要な活動、リソースやパートナーを維持するため、従業員への給与支払や材料費の経費が必要となりますが、これを積み重ねたものがコスト構造となります。
収益ストリーム
当然ながら収益を生み出していかねばなりません。収益ストリームとは、収入をもたらす方法を指します。サブスクリプションベースや買い切り型でのサービス提供など、価値提案を収益に変えるにもさまざまな方法があります。どんなモデルを採用する場合でも、すべての収益ストリームを列挙しましょう。
ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスの比較 (代替案を検討すべき時期)
もし、まだ顧客の課題を検証し、適切な解決策を探っているのであれば、リーンビジネスモデルキャンバスまたはリーンキャンバス (起業家の Ash Maurya 氏によって考案されたビジネスモデルキャンバスの派生版) の使用を検討するとよいでしょう。Maurya 氏がリーンキャンバスを考案したとき、顧客の課題に対応し、それを解決する製品を、より迅速に開発・構築する方法を模索していました。リーンキャンバスは、新しいビジネスを始める起業家に重点を置いています。
どちらのキャンバスも1ページに収まり、9つの要素が含まれていますが、リーンキャンバスでは、ビジネスモデルに関するいくつかの要素を、課題と解決策、そしてトラクションに重点を置いた要素に置き換えています。主な違いを以下に示します。
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課題 (主要なパートナーの置き換え)
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解決策 (主要な活動の置き換え)
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独自の価値提案
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不公平な利点 (顧客との関係の置き換え)
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顧客セグメント
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重要な指標 (主要なリソースの置き換え)
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チャンネル
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コスト構造
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収益ストリーム
戦略的計画を立て、ビジネス全体の仕組みを共有することが目的であれば、通常はビジネスモデルキャンバスの方が適しています。特定の顧客の課題に関するスタートアップのアイデアを検証することが目的であれば、リーンキャンバスの方がより迅速な出発点になります。
ビジネスモデルキャンバスの作成方法
さて、ビジネスプランに基づいてビジネスモデルキャンバスを記入する準備が整いました。ここでは、始めるためのステップをご紹介します。
1. 関係者を集め、資料を収集
ビジネスモデルキャンバスを作成する際、テンプレートのボックスへ情報を記入していくには、デジタルテンプレートへ入力したり、紙やホワイトボードへキャンバスを描き込むなどの方法があります。
既存のビジネスのビジネスモデルキャンバスを作成するには、マーケティング、営業、その他のチームからの意見が必要になるでしょう。スタートアップの場合は、リサーチを行う必要があるかもしれません。
2. キャンバスに記入
空白のテンプレートと必要な情報が集まったら、キャンバスの作成に移りましょう。包括的な事業計画を作成するのではなく、ビジネスモデルに必須の要素を明確にし、適宜修正を加えていくのが目的ですのでお忘れなく。
価値提案から始めて、記入を続けていきます。必要に応じて上述のリストを見直しましょう。
3. 前提条件をテスト
ビジネスモデルキャンバスは計画ですが、固定されたものではありません。チームメンバーから情報やフィードバックを集める中で、特定の側面に修正が必要となる場合もあります。主要パートナーにあるサプライヤーの名前を記入したけれども、より価格競争力のある別のサプライヤーが見つかったり、支払プランとして選択したサブスクリプションモデルが適していないと判明することもあるでしょう。こうした修正点をあぶり出すのがビジネスモデルキャンバスの目的でもあります。満足ゆくまで変更を加えていきましょう。
競合を意識してキャンバスを活用する場合は、市場の代替手段について把握している情報と自社の仮説を照らし合わせ、競合が十分に対応できていない領域をより効果的にカバーできるよう、モデルを調整していきます。
4. ビジネスモデルを適応させてキャンバスをメンテナンス
ビジネスモデルキャンバスは計画ツールと捉えられがちですが、実際には計画段階以降も便利に活用できます。キャンバスから得られたインサイトをもとにビジネスモデルを適応させていく中で、キャンバスにもこうした変更を反映させていきます。大掛かりな変更があった際には、最初からビジネスモデルキャンバスを作り直すのもよいでしょう。
事業計画のどの段階においても、最新のビジネスモデルキャンバスが役立ちます。関係者にビジネスモデルを提示して支持を獲得したり、新入社員研修に使ったりなど、シンプルながらも、柔軟でさまざまな用途に活用できる便利なリソースです。
新製品やスタートアップのコンセプトに対して、課題と解決策を中心にしたビューが必要だとわかった場合は、ビジネスモデルキャンバスをリーンキャンバスで補完することができます。どちらも1ページにまとめるという考え方は共通していますが、リーンキャンバスは顧客の課題、解決策、およびトラクションを検証するためにカスタマイズされたボックスを使用します。