ソフトウェア開発はここ数十年で大きく変化してきましたが、この進化は今後も続くため、開発プロセスも変化に対応し続ける必要があります。
とはいえ、常に新しいプロセスを生み出すのは非現実的です。そのため、柔軟で持続可能なソフトウェア開発プロセスを構築することが理想的であり、そこで最適なのがアジャイル開発です。
アジャイルソフトウェア開発は、反復と適応を重視したアプローチです。この記事では、特に人気の高いアジャイルフレームワークである「スクラム」について、概要やメリットをご紹介します。
スクラムとは?
スクラムのメリット
スクラムの大きなメリットに、アプローチが反復的な点があります。スクラムフレームワークを使うことで、チームは刻々と変化するソフトウェア開発の世界に適応し、スプリントを重ねながらよりよい製品を提供できるようになります。
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柔軟な対応力:スクラムは反復的な開発手法のため、要件変更や新しいアイデアに迅速に対応できます。各スプリント終了後に優先順位を見直し、必要に応じて改善ができるため、変化の激しいプロジェクトに適しています。
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高いチーム生産性:短期間のスプリントで成果を目指すため、チーム全体の集中力が高まり、効率的な作業が進めやすくなります。また、自己組織化が進むことでメンバーの自主性も向上し、全体の生産性が上がります。
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継続的な品質向上:スクラムではスプリントごとに機能の追加や改善を行うため、製品は段階的に向上していきます。頻繁にテストとレビューを繰り返すことで、早期に問題を発見・解決し、品質を保ちながら進めることが可能です。
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透明性の向上:毎日のデイリースクラムやスプリントレビューにより、プロジェクトの進行状況や課題がチーム全体で共有されます。これにより関係者が最新の情報を把握しやすくなり、プロジェクトに対する理解と参加意識が深まります。
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リスクの軽減:定期的なレビューや反復的な開発によって、リリース前に多くのリスクや課題を把握・解決できるため、大きな問題が後から発生するリスクが軽減されます。
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顧客満足度の向上:スプリントごとに実際に動作するプロダクトを提供し、フィードバックを早期に取り入れられるため、顧客の要望に応じた製品開発が可能になり、結果として満足度の向上につながります。
スクラム開発の主な原則と特徴
スクラム開発のフレームワークは6つの基本原則に基づいて構築されており、日次のスプリントミーティングからスクラムの成果物に至るまで、スクラムのメソッドの各側面にこの原則が反映されています。その主要な基本原則は以下のようなものです。
- 経験的プロセス制御
透明性、適応性、頻繁な評価を重視し、開発の各段階で製品をテストして改善します。 - 自己組織化
各チームメンバーが自立して行動し、プロセス全体に対する理解と合意が必要です。これによりチームが自律的に問題を解決しやすくなります。 - コラボレーション
チーム全員で責任を共有し、協力して最高の製品を作り上げる姿勢が求められます。成功も失敗も全員で支え合う環境です。 - 価値に基づく優先順位付け
プロジェクトの優先度は常に再評価され、新たな要求や要件に柔軟に適応します。 - タイムボックスの使用
スプリントや日次ミーティングなど、各要素には厳密な時間制限が設けられ、効率的な作業が促進されます。 - 反復的な開発
製品は段階的に構築され、都度改良が加えられるため、柔軟で高品質な最終成果物が得られます。
スクラムの各プロセスは、これらの原則によって支えられ、チームが常に目標に向けて進化するプロセスを維持します。
スクラムマスターとは?スクラム開発でのメンバーの役割
ここまで「スクラムチーム」という表現を使ってきましたが、これはある意味では単純に、スクラム開発フレームワークを使ってソフトウェア開発を行うチームを指します。もう少し踏み込んでそのチームのメンバーの役割を見てみましょう。
スクラム開発でのメンバーの役割は、以下の3つの「スクラムロール」に分けられます。それぞれの役割がスプリントを円滑に進め、製品の品質を向上させるために重要です。
スクラムマスター
ここまででも多少触れてきましたが、スクラムフレームワークでは多数のミーティングを行います。こうしたミーティングのスケジュール設定、調整や進行を行うのがスクラムマスターです。
スクラムマスターはスクラムに関するあらゆる要素を担当し、チームがスクラム方法論を導入する方法、微調整や改善が必要な部分の有無、スプリントの経過と共にチームを改善する方法などを検討します。
また、スクラムミーティングの適切なスケジュール設定とスムーズな進行を確保する責任も負います。
プロダクトオーナー
最高の製品を提供するには開発チームが顧客のニーズや期待を敏感に察知する必要があり、そのためには、両者の間にオープンなコミュニケーションが欠かせません。これを達成する役割を果たすのがプロダクトオーナーです。
プロダクトオーナーは製品のあらゆる側面を知り尽くした人物として顧客と開発チームとの主要な接点となります。顧客の要件をアクションアイテムに変え、製品バックログの作成と管理を行います。
スクラムチームにはそれぞれ1人のプロダクトオーナーがおり、複数がこの役割を担当することはありません。
開発チーム
これは単純で、製品の開発を行う人たちを開発チームと呼びます。スクラムの開発チームは小規模で、設計者やコーダーなど、幅広いスキルセットが必要となります。
スクラムの基本原則にもあった「コラボレーション」が重要となる要素で、スクラム開発チームのメンバーは、ボトルネック回避のために他のチームメンバーに自分のもつスキルを教える必要があります。実際のコーディングを担当するのはこのチームとなるため、各バックログ項目に必要な時間やリソースの見積もり、割り当てにも責任を持ちます。
スクラムの目標・成果物は何?
すでにスクラムの専門用語を多数取り上げてきましたが、もう一つ。スクラムでは、作業の管理や完了のための仕組み、またはツールを「成果物」と呼び、主に以下の4つが挙げられます。
1. 製品バックログ
プロダクトオーナーが管理する製品バックログは、最終製品の要件をリスト化したものです。優先順位の変更に合わせ、プロダ クトオーナーはバックログをシャッフルしたり、並べ替えたりします。各スプリントの開始時点でチームが製品バックログからそのスプリントで取り組むべきタスクをいくつか選びます。
2. スプリントバックログ
スプリントごとに製品バックログから選ばれたタスクはスプリントバックログに入れられ、このログは開発チームが管理し、チーム内でのみ使用します。こうしたタスクの整理は、一般に、各タスクの進捗状況と優先順位をビジュアルで追跡するスクラムボードで行います。ボード上でタスクをストア、ToDo、進行中、完了の列に分類し、完了したタスクはこれらの列に移動します。

3. ユーザーストーリー
ユーザーストーリーとは、バックログの項目を記述する方法です。製品バックログとは基本的に、最終製品に含めるべき機能をリスト化したもので、ユーザーストーリーはこれらの機能をエンドユーザーの視点から説明し、ユーザーがその機能を必要としている理由、実際にはどう見えるのかを検討するものです。

4. 製品のインクリメント
各スプリントが終わる時点では、完了したタスクが山積みになっているはずです。これをまとめて製品のインクリメントと呼び、スプリント終了時の製品のバージョンのことを指します。
